あいどんわなだい

わたしより得してる奴は誰だ!お前か!お前もか!ていうか全員?
うんこんばんは、この秋は赤坂サカスに行きたいごだまめです。


さっきまで『悪夢探偵』を観ていたのですけれども、予想以上に面白くて、わたくし思わぬ満足感に気を良くしております。
塚本晋也作品は『双生児』と『鉄男』を観たことがあったんですが、前者はともかく後者が本当に意味が分からないのに延々と血なまぐさいシーンが続くので腹が立ち、わたしの中では「なんか前衛ぶってそこそこ通の人に認められてるけど多分ムいちゃえばたいしたことねえよ」箱に入れていたのですが、相も変わらず暇なのと、龍さま(分かってると思いますが松田龍平)が出てて時間もそんなに長くないので借りてきたんですよね。


龍さまの役どころは人の夢んなかに入って、悪夢の原因を取り除く力はあるんだけど、なんかいろいろ繊細だから人生イヤんなっちゃって小汚いアパートで自殺未遂を繰り返している薄暗い青年なんですけども、うっとうしく伸びた洗ってなさそうな髪型と無精髭が実に良くてねみなさん。
あとだいたい景気の悪い表情で「ああいやだいやだ」とか「消えてしまいたい」とかネガティブなことばっかり言ってるんですけど、これがまたあなた、ずっぽしはまっていてステキなんですよ。「アタシがなんとかしてあげなきゃ!」と母性本能を掻き立てるとかそんなお小水じみた暗さじゃなくて、ダークヒーロー的な、夜回り先生風に言えば「いいんだよ」な揺るぎない小心者ぶり。
辛気臭い表情で人の気持ちをウキウキさせるなんて、さすがは松田優作の息子、ナチュラル・ボーン・スターだと感服してしまいました。いやあほんと機会があったらわたしの腹を革靴で踏んでもらいたいものですねえ。


あ、もちろん龍さま以外にも見所はありますよ!
スーツを着こなす大杉漣とかhitomiのイイ体とか追いかけられる時のイヤな感じのリアルさとか原田芳雄とかいろいろありますが、わたしが、ていうよりも多分観た人の4割くらいは「あー」って思うのは安藤政信の夢の中でのシャウトだと思います。


ありきたりなよくあるセリフなんですけども、「世界を壊したいと思ったら、自分が壊れればいい」っていうアレね。改めて耳にすると恥ずかしいはずの言葉なのですが、映画の殺伐としたトーンのせいなのか、この世の数少ない真理のひとつだからか、わたしの心象に一致しているからか、妙に納得してしまいましたよ。納得しても仕方ないですけども、でもほんとにそうですよね。そもそも唯一の「世界」なんてないですから、どこまでいっても「世界」は自分ひとりが抱え込んでるものでしかないんですよねえ。それこそ世の中的には「その多様性にこそ価値がある」っていうことなんでしょうけれども、でも自分がおかしかったら世界もおかしくなっちゃうわけで、大変ですよねホント。


おそらく「ココはもうどうでもいいシーンだし、血とか出てこないし」とトイレタイムを使って考えたであろう終わり方がなんかちょっとだいぶ何なんですけれども、バイオハザードのちょっと進んだステージみたいな、スピード感のある悪夢の描写は良くできてると思うので、未見の方はレンタル100円の日にでもぜひ。『クローズド・ノート』よりは使えそうなシーンが多いですよ!ひょー!